冬蔷薇

阪本がオリジナル脚本を執筆し、自ら監督を務める「冬薔薇」は、ある港町を舞台とする物語。“ロクデナシ”という言葉が似合う渡口淳は専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるみ、友人や女から金をせびってダらしている。彼には理由があって、家庭環境や人間関係の中で生まれた無念や絶望からくる鬱屈があり、その裏返しとして自らを彼方に向けて鎮魂する役割を抱え込んでいた。一方で、渡口はその外見通りの“冬蔷薇”のように、芯の強さを持ちつつも繊細な心を秘めている。その繊細な心は周囲の人間関係や港町の風物詩、季節の移ろいなどに触れることで次第に開花し、彼自身が気づかなかった価値を見いだしていく。物語は渡口の成長や周囲の人間模様を通して、「冬薔薇」のもつ独特の雰囲気と美しさを描き出している。